管理会計分野で近年「テンション:張り」という概念が注目されている。これは、マネジメントコントロールシステム(MCS)という管理会計の研究分野の用語で、MCSを簡単に説明すると、「MCSは、組織を戦略目標や競争優位に向けて舵取りするために、マネジメントを支援するツール。サイモンズ(1995)によれば、マネジメント・コントロール・システムとは、マネジャーが組織活動のパターンを維持または変更するために用いる、形式的で情報ベースのルーチンや手続きのことである。」ざっくりいうと、目標達成のための支援ツールや諸活動のイメージ。

 また、テンションという言葉を説明すると、 Henri (2006) によると、組織に本来的に内在するジレンマ, 矛盾, 対照, コンフリクト, パラドックスなどに類似する緊張状態テンションと呼び、業績向上に寄与する良好な緊張状態ダイナミック・テンションと呼んでいる。

 これらの説明を読んだ時にテンションというのは、結局のところ「空気」に似ていると理解すると腑に落ちた。「空気」とは、場の空気を読むなどの表現で利用される空気のことで、昭和52年に山本七平氏によって発表された空気の研究は、いまだに読みつがれている。本書は、日本人の空気の研究であり、日本人が陥りがちな場の空気に流されるとか同調圧力とかの理解には役立つ。反対に、よい意味で張り詰めた空気というものも存在する。

空気の研究

「超」入門 空気の研究――日本人の思考と行動を支配する27の見えない圧力

 同調圧力や忖度によって組織全体が思考停止状態に陥ることは、過去のさまざまな企業や政府等の事件で明らかだが、では、どうやってダイナミックテンションの状態を保つべきかについても、研究が進んでいるようだ。