最近大谷翔平選手のニュースを見ない日はないと言っていいほど、話題となっているが、大谷選手が高校生だったときに、利用した9マトリックス(マンダラート)は、アイディアの発想や目標設定として利用されているが、この「9」という数字は、目標の数やKPIの設定としてのバランスが絶妙という話をしたい。
KPIとは?
以下Wikiより引用:重要業績評価指標(じゅうようぎょうせきひょうかしひょう、英: key performance indicators, KPI)は、組織の目標達成の度合いを定義する補助となる計量基準群である[1]。KPI はビジネスインテリジェンスにおいて、現在のビジネスの状態を示すものとして使われ、今後の対応策でどうなるかを予測するのに使われる。
ビジネス上で、KPIは、ここ15年ぐらいは特に認知されてきているようだが、この用語がいつから使われているかをGoogle Scholarで調べてみると、少なくとも1978年には、同じ意味合いで使われているようだ。
また管理会計の世界では、「バランス・スコアカード(BSC)―新しい経営指標による企業変革 単行本 – ロバート S.キャプラン (著), デビッド P.ノートン (著)」(日本での発売は、1997年)でKPIという言葉を広める大きな要因となっていると思われる。
BSCは会計士の管理会計の分野では当然に学習されるものだが、それ以外に最近はIT関係の資格でもマネジメントの分野で学習されるようだ。特にIT関係の業種でKPIということが当たり前のように利用されているのは、JICPA(日本公認会計士協会)の関係者の啓発ではなく、IPA(独立行政法人情報処理推進機構:IT関係の資格試験を運営)のおかげだろう。
遅行指標と先行指標
ライトなKPI関係のビジネス書の解説では、あまり記述されていないが、BSCのKPIには、先行指標と遅行指標という概念がある。この用語をビジネス上の概念ではなく、わかりやすくするためにダイエットでこの用語を解説すると、日々の摂取カロリーが先行指標で、結果としての体重や体脂肪率が遅行指標と考えるとわかりやすい。
この考え方は、ビジネス、スポーツ、勉強などあらゆる分野において、KPIは利用できる。ビジネスでは、人材育成、業務プロセス、顧客満足などの各指標が、最終的な財務指標に帰結する。スポーツでは、トレーニングの強度や頻度、身体的な指標、練習での各種指標となるKPIや戦歴、そして本番での記録や勝敗など。勉強(特に試験)では、学習時間、頻度、練習問題を解いた際のスコア、頻度、そして模試などの中間的な指標、本番での試験など。
遅行指標と先行指標は、ある物事を因数分解するという考え方に効果の発現までの時間軸の概念を取り入れたものだと考えるとよい。
いくつのKPIを設定すべきか?
BI(ビジネスインテリジェンス)などのソフトを利用すれば、指標はいくつも簡単に設定することができるので、ついたくさんのKPIを設定して、無尽蔵に指標ばかり見てしまうことになりかねないので、意識すべき指標をいくつに設定するべきかという問題について日々思うことがあったのだが、先日この答えをある管理会計の専門書を読んでいたときに発見し、なるほどと思ったので紹介する。その答えは7±2に設定せよとのことだった。
根拠として、述べられていた概念は、心理学者のジョージ・ミラー氏のマジカル・ナンバーという考えで、「一度聞いただけで直後に再生するような場合、日常的なことを対象にする限り記憶容量は7個前後になるということを示した。この7個というのは情報量ではなく意味を持った「かたまり(チャンク)」の数のことで、数字のような情報量的に小さなものも、人の名前のように情報量的に大きな物も同じ程度、7個(個人差により±2の変動がある)しか覚えられない」ということらしく、これを根拠として、7±2に設定せよとのことだった。
限界に挑戦するという視点(フロー理論)
では、目標の設定数を4以下にするとどうなのかと思うかもしれないが、これも1とか2ぐらいの目標の数であれば、比較的容易になってしまう。これが5~9だと、さまざまな側面を考慮することになるので、一気に難易度レベルが上がる。
同時に考慮する事項が多いということは、スキルレベルや挑戦のレベルが高くなるという考え方も成り立つ。これをフロー理論(フロー(英: flow)とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。:厳密には行為の瞬間を表す概念なので、完全に一致する考えではないが・・・)で、表現すると、設定数が7±2であれば、「フロー」状態になるが、1とか2だと「無感動」とか「退屈」なレベルになってしまうというイメージだ。
はじめに記載した大谷選手が高校生の時に作成したマンダラートであれば、中心概念となる目標から8個の主要な目標を設定し、さらに、詳細な目標を設定する際の考慮事項を記入するので、マジカルナンバー(7±2)、複数の視点を持つBSC、更には心理学のフローの考え方を取り入れることなり、最適な目標設定となる。